第17回読書に関する作品コンクール審査結果

ページID1008847  更新日 2023年3月6日

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特選

各部門の特選作品をご紹介します

文章部門

読書感想文

「今、自分ができること」

吉田小学校四年 柴田 桜子(しばた さくらこ)

 

 わたしは、岩手県の花巻市にある宮沢賢治童話村に行ったことがあります。その時、不思議なしかけやキレイな空間がたくさんあって夢中になりました。もう一度行きたいと思って宮沢賢治のお話をさがしました。「気のいい火山弾」は、ちょっとわたしににている部分があったので、この本を選びました。
 このお話は、死火山のすそ野で「べゴ」というあだ名の大きな丸い石が、かどのある石や、かしわやおみなえしやコケに、ばかにされても、静かに笑っているお話です。
 わたしが一番心に残ったことは、ベゴ石が「わたしの行くところは、ここのように明るい楽しいところではありません。けれども、わたしどもは、みんな、自分でできることをしなければなりません。」と言ったことです。
 なぜかというと、毎日のようにばかにされているベゴ石にとって、すそ野は楽しい場所だったことに、びっくりしたからです。そして、そんな場所から運び出される時も文句を言わず静かにそれを受け入れているからです。
 もしわたしがベゴ石だったら、きっと泣いてしまいます。味方もいないし、毎日みんなにせめられているからです。わたしは少しくらいおこっても悲しくても、周りの友達には分からないようにしています。そしてベゴ石のようにできるだけ笑っています。でも、本当につらい時には泣いてしまうし、イライラしてお母さんに聞いてもらうこともあります。
 ベゴ石はたった一人きりで、ばかにされても、ちっとも気にしない様子で、空や雨、お日さまを見つめています。それに、これからベゴ石が行く所は、山のすそ野のように自然を感じることができない大学の研究室なのです。わたしなら、そんないやな人たちばかりの所や自然のないたいくつな所なんて、ぜったいにいたくありません。
 その時はっと気がつきました。ベゴ石は、自分の力でいる場所を変えることはできません。他の力で動かされた所にいなければならないのです。
 わたしは、この本を読んで、幸せな気持ちは、自分がつくるんだと学びました。ベゴ石はどんなに笑われても、その度に真剣に相手とお話をしています。そして相手があきると、またお空を静かに見上げます。それ以上なやんだり悲しんだりしないのです。
 ベゴ石が言っていた「自分ができることをする」というのは、自分が変えられないことになげくことなく、その時自分ができることを一生けん命にするということ。それは周りのみんながベゴ石を笑いものにして楽しむことではなく、自分で自分を幸せな気持ちにするということです。
 あと半年で高学年。たとえいやなことがあっても、相手をおこらずに「こういうこともあるな」と、悪い気持ちを引きずらないようにしたいです。そして、いやなことや苦手な人にもいいところはきっとあると、前向きに考えていきたいです。

『宮沢賢治全集 5 より「気のいい火山弾」』宮沢 賢治/著
〔筑摩書房1986年ISBN978-4-480-02006-2〕ちくま文庫

作品選評

 

 読む本の幅が広がり、さまざまなジャンルの本を手にする機会が増えてくる中学年。そんな時期に、宮沢賢治の文学作品に挑戦してくれたことを嬉しく思いました。宮沢賢治の童話は、言葉の難しさから内容を容易にイメージしづらいところがありますが、よく読み込んで桜子さんなりに解釈し、感想にまとめていました。
 作品のよかった点の一つ目として、主人公「ベゴ石」と自分を重ねて読んでいることが挙げられます。これが物語を読むことの醍醐味かもしれません。ベゴ石の言動や様子を捉えて自分と似ているところに共感したり、逆に「自分だったら・・・。」と、今の自分と比べたりしていました。また、自分の力では居る場所を変えることができないベゴ石の境遇に思いを寄せ、「自分ができることをする」とは、その時自分ができることを一生けん命にすること、自分で自分を幸せな気持ちにすることだと、この物語を読んだからこそ得られた考えがまとめられていました。主人公の言葉に込められた思いに対して、自分の考えをもつことの大切さを感じさせてくれる内容でした。
 よかった点の二つ目は、物語を読んで感じたことや考えたことを、これからの自分にどう生かしていくかまとめていたことです。高学年になることを見据え、怒りを相手に向けずに気持ちを切り替えること、嫌なことや苦手な人のよいところに目を向けて前向きに考えていくことなど、物事への取り組み方や友達に対する見方を広げていました。
 自分の思いや考えを素直な言葉で力強く語る表現が、読む人を引きつけるのでしょう。これからも読み応えのある本をじっくりと読んでほしいと思います。


短文部門

あたたかなベッドの上で本を読む 寄り添う猫と至福のひととき

横手北中学校 二年 澤井 彩歩(さわい さほ)

作品選評

 

 思わず、「そうだよね」と返歌したくなるような、読者を引き込む短歌です。短い文ですが、作者の姿が見え、ぬくもりを感じ、ここちよさにうっとりします。
 作者の実感が、手に取るように伝わってくるのはなぜでしょうか。それは、言葉の力だと思います。どんな言葉を使うか、どんな順に並べるかなど、言葉の効果を十分に発揮した演出だったといえるでしょう。
 澤井さんが、いちばん伝えたかったのは「至福のひととき」でしょう。それは、この言葉をラストにもってきていること、「至福の」という言葉で修飾していることから、この「ひととき」を強調していることが伝わってきます。
 また、「ベッド」「(愛)猫」「本」、この三つのものを組み合わせることによって生まれる至福感は、“猫好き”かつ“本好き”にとってはこの上ないものと考えられます。さらに、「猫」を修飾する「寄り添う」によって、猫特有のやわらかさやあたたかさがクローズアップされます。
 限られた語彙数で、究極の至福を表現することができる澤井さんは、きっと、言葉をもって周りのみなさんを幸せにしてくれる人だと思います。


絵画部門

絵:ふくろうの神様からのおくりもの

ふくろうの神様からのおくりもの

増田小学校 五年 池上 桜花(いけがみ さくら)

『アイヌ神謡集「銀のしずくふるふるまわりに」』知里幸恵/編訳〔岩波書店〕岩波文庫

作品選評

 アイヌに伝わる神話を読み、感じたことを丁寧に絵に表現していました。ふくろうの神様が与えた宝物に加え、平和なくらし、豊かな自然という桜花さんの考えを神様の吹き出しに鮮やかに描いていました。アイヌの衣装や表情にこだわった描きぶり、フクロウの神様が醸し出す輝き、背景の景色や周りの模様とどれも神話の世界にぐっと引き込まれます。読書を楽しみ、味わったことを表現することを楽しむ桜花さんの豊かさが素敵でした。




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