第14回読書に関する作品コンクール審査結果

ページID1005999  更新日 2021年10月25日

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特選

各部門の特選作品をご紹介します

文章部門

読書感想文

「地図作りの旅を共にして」

横手明峰中学校 3年 赤川 結子 (あかがわ ゆいこ)

 私たちは地図のない人生を歩んでいる。しかし、私は伊能忠敬という人物と日本地図作成という旅をともにするつもりでこの本を読み進めた。そしてその旅を終えたとき、私の眼前にさまざまな道と道とが繋がり合い、果てしなく大きく広がっていく一枚の地図が広げられたような思いがした。まるで「この地図を完成させるのは君自身だよ」とでも言われているかのように。
 忠敬は若い頃母を亡くし、さらに父にも捨てられ十一才までひとりだった。私とはまるで違う環境だ。もし私がそんな境遇であったなら、毎日どうしてよいか分からず、混乱し、勉強はおろか好きなバレーボールでさえまったくやる気になんかならなかったと思う。
 しかし、忠敬はそんな境遇でも学問に対する情熱を失うことがなかった、なぜだろうか。私にとっての学問、つまり勉強は正直言ってあまりおもしろいものではない。将来役に立つからと言われればそんな気がしないでもないが、結局は宿題だからしょうがなく毎日机に向かっているだけだし、とりあえず、高校には行きたいから、後で困らない程度にはやっておこうというくらいのものである。
そんな私と忠敬の違いの理由を、次の言葉が教えてくれた。
 「いくら手を伸ばしても、天の星にはとどかぬ。だが、頭で道理を考え、手足を動かして測量すれば、地を歩いていても星に届くかもしれぬ。それが学問だ。」
 地を歩いていても星に届くかもしれぬ。それは、学問を地道に続けることは今不可能と考えられていることを可能にすることであり、自分自身の人生の地図に一本一本の道を書き込んでいくようなものともいえる。
 不幸な生い立ちを背負った忠敬は、学問を続けることで、自らの人生をも変えられると考えていたかもしれない。それが私と忠敬の違いの源なのだ。
そんな彼の地図作りの旅は、とにかく地道で気が遠くなるようなものだった。私ならすぐに楽をして簡単にすませてしまおうと思うのだが、「一足飛びに結果を得ようとするとしっぺ返しをくらう。」という言葉からも分かるように、忠敬はそれを許さない。
 だから忠敬が測量の際に平次に出す指示も本当に細かく緻密だったし、平次がいい加減な仕事をしてしまったときの厳しさも尋常ではなかったのだ。
 しかし、忠敬は厳しいだけの人ではなかった。平次がいい仕事をしたときには、「よくできている。」と優しく褒めている。めったにあることはなかったかもしれないが、だからこそ平次の喜びはこの上ないものになったのだと思う。私もバレーボールのことで監督や親に叱られてばかりだが、たまに褒められると本当に嬉しくて次も頑張ろうという気になる。決して親の前では口に出さないけれど。
 また、忠敬は人への接し方が平等で誰かを特別扱いしたり、特定の人ばかり注意したりすることは決してない。これは、もちろん当たり前のことだけれど、すごく大切で誰でもできることではないと思った。
 自分も部活動で後輩に教える立場になったときに、全員に目を配ることができず、一部の人にしか教えることができなかった。友達への接し方だって決してみんな平等というわけではない。
こう考えると、忠敬は私とはまったく違う人間に感じられるが意外にも似ているところもあった。それは几帳面なところだ。
 自分はよくものがずれていると気になって直したり、定規で線を引くときにノートの線からはみ出さないようにしたりと割と細かいことを気にするタイプだ。忠敬も、筆まめであるばかりでなく、平次への作業の指示が細かく一つ一つ丁寧であることからもその几帳面さが分かる。第一よほど几帳面な人でなければそもそもこの測量作業に手を出すことなどなかっただろう。
 だとすれば、私も将来忠敬のように人生をかけて追及していくような課題に出会い、旅をしながら地道に一つ一つ解決していくようなドラマチックな人生が送れるのだろうか。正直いってそれは分からない。しかし、忠敬の言葉がまた教えてくれた。
 「あらかじめ用意した答えを導くために、都合のいい数字をあてはめる。それは学問において絶対やってはならないことだ予測と観測が違うことなど、いくらでもある。それがどうしてか考える。学問はそこからはじまるのだ。」
 私の人生だって同じだ。あらかじめ決められた目標に向かって数字を当てはめていくように人生が進んでいくはずがない。必ず躓いたり悩んだりすることがあるはずだ。その時こそそれが何故なのか考え、自分の力で進むべき道を探し出していきたい。そこにはきっと道なき道を歩んだ、私だけの地図が描かれているに違いない。

「星の旅人伊能忠敬と伝説の怪魚」小前亮/著
 (小峰書店2018年ISBN 978-4-338-08162-7)

作品選評

 特選作品に選ばれた横手明峰中学校赤川結子さんの作品は、『星の旅人伊能忠敬と伝説の怪魚』を読み、自分と伊能忠敬の人柄や生き方を照らし合わせたすばらしい読書感想文でした。
 書き出しも「私たちは地図のない人生を歩んでいる。」と日本地図を作成する旅に出る伊能忠敬と、これから自分自身で人生の旅を描いていくであろうことを読み手に想起させるようになっています。これにより、読み手が作品の世界に引き込まれてしまいます。また、伊能忠敬と自己の照らし合わせ方として、境遇やこれまでの学問に対する考え方、部活動を通しての人との接し方を相違点として取り上げています。その違いから自分にないものを得るだけでなく、人生をかけてまで一つの物事を成し遂げようとする熱情を読み、読書を通しての自己の成長を感じさせています。
 結びは、これからの将来、「自分の力で進むべき道を探し出していきたい。」と力強さを感じさせます。これから赤川さん自身が、どのような地図を描いていくのか楽しみです。


短文部門

ほんよんで こころにはながさきました
 あしたもみずをあげましょう

髙橋 柚 (たかはし ゆず) /醍醐小学校 1年

作品選評

 心に咲いた花は、どんな花だったのかな。
 どんな色の花だったのかな。
 その花を、大切に育ててほしいな。
 その花に実がついて、種ができるかもしれないね。
 あなたという土が豊かだから、きれいな花が咲くのでしょう。

 読書による成長の姿が目に浮かぶような作品です。今、小学1年生の柚さんは、将来どんな読み手になるのでしょう。とっても楽しみですね。
 本は心の栄養です、とよく言われます。市立図書館、学校図書館など、心の栄養となる本に囲まれた環境を生かし、「一人一人の心に花が咲く読書」にあふれる横手であってほしいと願っています。


絵画部門

絵:ねこざかなとおともだちとわたし

ねこざかなとおともだちとわたし

佐藤 彩子(さとう あやこ)/(たいゆう保育園 4歳児
「まいごのねこざかな」わたなべ ゆういち/作・絵 〔フレーベル館 2006年〕
 

作品選評

 画用紙に描かれているのは、お話の終盤。ねこざかなたちを飲み込んでしまった大きなくじらが一気にブワーッとしおをふきあげたところです。水しぶきが勢いよく表現されていますね。ねこざかなといっしょに飲み込まれていたたこやうつぼの姿も見えます。何よりも彩子さん自身が大迫力で登場していて、お話の世界に入り込んでわくわくしている様子が生き生きと伝わってくる力作です。


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