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リンゴ栽培の良品質、均産維持に欠けている要因は

 秋田県果樹試験場や県立農業短期大学でリンゴ研究を長年続けてこられた、秋田県リンゴ普及の第一人者、神戸和猛登先生からリンゴ栽培についてメッセージをいただきました。
 リンゴ栽培にお役立てください。

リンゴ栽培の良品質、均産維持に欠けている要因は、あれや、これや

 先日、秋田魁新報に主力品種「ふじ」の収穫期、リンゴ「最高の出来」と掲載されていた。「今年は天候に恵まれた」「ここ数年で最高の出来」との声が多い。連日、たわわに実ったリンゴの収穫に汗を流しているとのこと。
 今年は「朝晩の寒暖差が大きかったおかげで、リンゴに蜜が多く入り、色づきも良く、収穫していてとてもうれしい。」この「うれしい」「たのしい」気持ちを忘れないで欲しい。
 まず、一つはリンゴの樹によく頑張ったと感謝を忘れないこと、他の一つは、生産者の皆さんが土づくりから始め、自然現象や病害虫などと格闘の末ようやく手に入れた秋の実りである。並々ならぬ努力の結果であると「ほめて」やりたい。来年も仕事が楽しく出来るように頑張って欲しい。
 仕事が楽しく出来るようになるには、まず、商品性の高い果実生産と均産が持続できる知識と技術力を持つことである。更に、欲を言えば高い付加価値を見つけたい。 
ただし、物事は言葉で言うほど簡単に達成できないが、先ずは、その方向で目標を立てて行動に移して見ることである。努力すれば道は開ける。
日本に蔓延しているといわれる閉塞感(とだされるような雰囲気)を打ち破るために必要なことは、ただ一つ、何かをやってみようと言う意欲である。
良品質、均産維持を継続するにはどうすれば良いものか あれや これや 考えてしまった。地域ごとに問題点を検討して欲しい。または、私はこうして良品質、均産維持を継続している体験発表など出来ないか、アイデアを出して行動する勇気を起こそう。

1願望でなく、明確な目標に向かって

横手市平鹿のりんご園地

横手市平鹿のりんご園地

 リンゴ作りを頑張る・・商品性の高い果実の比率を高めたい・・果実を均産したい・・これは、このままでは目標ではなく願望である。
では、「目標とはどんなものですか」、目標とは出来るだけ期限と指標とする数値がはっきり明らかにしていることが必要である。「リンゴ樹相診断のすすめ」には、いつ、と云う調査期限と指標の数値が記してある。また、目標に近づけるために何が問題であるかを明らかにして改善策を講じている。
 樹相診断は調査と言うことで最初は戸惑うことがあっても、二年後、三年後には自然に樹相がはっきり確認出来るようになる。また、実施するには一人ではなく、地域の絆を求めて他人を巻き込み、組織として実行することが一番望ましい。何故なら、一人だと達成への道をあきらめても誰も気づかない。続けやすくなるだけでなく、大勢の知恵を出し合い、良い環境のもとで支え合うことが望ましい。

2リンゴ園の豪雪対策は、まず、予防対策を徹底

平成23年の雪害の様子

平成23年の雪害の様子

 平成23年の大雪以来、県南部を中心に4年連続で雪害が発生し、雪害からの復旧は未だ途上にある。生産量の均産状態を維持するには雪害防止対策が最重要課題であり、そのためには積雪前に実施する予防対策である。
 次に記した二つの対策はいずれも一部で実施して実績が上がっている。

◎マルバカイドウ台…

支柱を使った雪害対策

支柱を使った雪害対策

1)マルバカイドウ台の開心形樹などでは、収穫後に大切な主枝や亜主枝の太枝に欠損被害を受けないように丈夫な支柱を適切な位置に立てて固定する。また、支柱の先端をV字型に切り、溝になった上に太枝を載せて、支柱がはずれないようにやや押し上げ気味に入れるとよい。この対策を徹底すると予防対策の効果が大きい。また被害が起きても支柱より先の部分で被害は軽減できる。支柱より先端の枝の雪降ろしは実地する。

◎多雪地帯におけるわい化栽培…

器具を使い側枝を下方へ誘引

器具を使い側枝を下方へ誘引

2)多雪地帯におけるわい化栽培の主幹形樹では、支柱で補強するのではなく、側枝の分岐角度を広い角度に矯正して耐雪性を付与する予防対策がよい。耐雪性を付与するためには、一般に行われる矯正、誘引より分岐角度を広く、主幹に対して側枝の分岐角度を90度(水平)~100度の広い角度に誘引、矯正すると耐雪性が強くなり、積雪2~3mの豪雪地帯で除雪を実施しなくとも殆ど被害を受けていない。
新梢は6月頃から随時、分岐角度が90~100度以上になるように1~3年かけて誘引、矯正する。矯正完了後は除雪の心配はなくなる。
なお、分岐角度の極端に狭い側枝候補枝は裂けやすい枝であるから一度切り戻して、新しい枝が発生したら広角矯正処理を実施するとよい。
 

3不作を知らない、貯蔵養分の「チカラ」

 平成25年産リンゴ「ふじ」の選果場における玉流れを聞くと、県南部は40>46>36玉と例年より小玉になっている。県北部は50>46>40玉と著しく小さい。この原因は、発芽以降も気温が平年を下回り、開花期が7~10日遅れたことに加え、6月の少雨、乾燥、7月は多雨、日照不足が影響したと言われている。
 平成25年産「ふじ」は、正月夢に描いたような商品性の高い果実にはならなかった。また小玉果実が多く、収量も少なかった。したがって、大きな問題点は商品性の低下と共に減収の原因になった小玉の比率が高いことである。
このように、自分の園地の問題点が小玉果実であることは判るが、小玉果実の主な原因が何であるか、よく解らない園主が多い。
 平成25年産「ふじ」の果実肥大調査を各地域振興局の協力を得て調査し、園芸振興課がまとめた資料(表―1、平年比)がある。表ー1を見ると全般に果実の肥大が悪く小玉傾向の園地が多い。しかし、中には立派に肥大し平年比99%~102%と平年並みに肥大した園地が、雄勝、杉山田、曲田、金沢東根の地域で見られた。
 次に果実肥大調査樹の頂芽の大きさ(横経)を表ー2で見ると、頂芽の大きさ(横経)は調査樹全体の平均値が3.35mmに対して平年並みの果実肥大を示した調査樹の頂芽の大きさは3.8mm~約4.0mmと明らかに大きいことがわかる。逆に、3mm以下の弱小芽(不良頂芽)の比率が少ないことは当然のことである。
 開花期が著しく遅れるなど果実肥大の阻害要因がある年でも、大きい充実した頂芽は貯蔵養分を十分に貯えた状態で花芽分化および形成した頂芽である。
 果実の大きさは、その果実の形作っている細胞の数とその一つ一つの細胞の大きさによって決定される。したがって、果実の中に含まれている細胞数が多ければ多いほど、また、個々の細胞が大きければ大きいほど果実は大きくなる。
 この細胞分裂による細胞数の増加は果実の発育中、全期間にわたって行われないで開花後の極めて短い期間、開花後25~30日の頃である。すなわち、果実の大きさを決定する二つの大きな要素のうち、一つの細胞数は開花後1か月と早く、短期間に決定する。
 このように、一般のリンゴ園では不作の年でも、貯蔵養分を重視し頂芽の充実を心がけて栽培管理を実施すると、平年並みの作柄を確保できる。この「チカラ」は果実肥大の基礎である細胞数の増加によるもので貯蔵養分の大き「チカラ」である。
 前年の貯蔵養分の多少によって、頂芽の充実度が異なり、貯蔵養分の多い樹は頂芽が大きく、開花すると花そう当たり平均花数が5花以上と多い。また、花そう当たり花数は多いほど、開花が早く、花そう葉数も多い。さらに、結実数が多く、幼果の発育も良好で良い素質を持っている。

4適正着果量に摘果することが難しい

 摘果が不慣れな園地では、開花期の授粉環境が良好で、良い果実が多く結実した年には欲と絡んで着果数を多く残している。その結果、限りある養分が果実に多く利用され、新梢の太りが衰え、根の伸長も抑えられる。勿論、果実そのものも養分の競合が激しく個々の果実への分配量が少なくなって果実の肥大が衰えると共に、花芽形成が悪く隔年結果の原因になり、良品質、均産維持は困難になる。
 一般的に、一果当たりの葉の枚数が多いほど果実の肥大が良く、品質も優れており、充実した花芽も多い。大玉品種「ふじ」は一果の果実を立派に肥大、成熟させ、更に、次年度に必要な充実した花芽を形成し、樹の健康を維持する養分を確保するための適正な着果基準は、成葉60~70枚に一果も割合を適正基準としている。しかし葉の枚数を数えて摘果基準の指標にすることは困難である。葉の枚数は一頂芽当たり平均15~16枚であるから、4頂芽に一果の割合で成葉が60~70枚に一果となる。このように、一般的には頂芽を摘果基準の中間指標に用いている。この果実と果実の間隔は平均20~25cmを目安にしている。
 しかし、頂芽数を中間指標に用いた場合には、樹勢の強弱によって新梢の長さが異なると共に着葉数にも差がある。新梢停止期の早晩による葉の枚数や葉の大きさ、光の当たる程度、枝の角度など要因(樹相)を考慮しながらそれぞれの部位における着果量を決めることが望ましい。そのためには、ある程度の長い経験が必要である。
 適正な着果量に摘果することが難しい不慣れな場合には、まず一つ目は、仕上げ摘果を始める前に仮の仕上げ摘果を行う気持ちで、理想と思われる枝の幼果30果位に大袋を掛けてみる。ただし、大袋と大袋が重なることがなく、多少のゆとりがある状態で袋掛けをおこなう。その後で袋掛けした枝の袋を掛けていない幼果を摘み取り仕上げ摘果の状態にする。次に大袋をはずして幼果と幼果の間隔を測定し、よく観察し、参考にしながら実際の仕上げ摘果を進めてみる。
 二つ目は、7月~8月上旬にかけて見直し摘果を2巡程度実施する。見直し摘果の時はリンゴ樹上選果板(参考に青森県りんご協会発行)を使って肥大の劣る小さな果実と品質の劣る果実を摘果する。
 樹上選果板には時期ごとに理想的な発育、肥大している果実の大きさと同じ大きさの穴が明けられてある。調査月日と果実の大きさ(直径)を示しますと大玉良品生産のためには7月1日:42mm、7月11日:49mm、7月21日:55mm、となっている。参考にしながら各時期の穴の径を通る果実は小さいから摘果して理想的な果実を揃えることを主体にする。

5葉は養分の生産工場、一枚でも大切に

 葉は養分の生産工場であり、気孔から水分を蒸散させて養水分の吸収に力を貸し、自ら水蒸気に変わる蒸散の潜熱によって葉が高温になるのを防ぎ、葉の健康を保っている。
 葉の働きは、葉の緑色細胞の中の葉緑体によって、気孔から取り入れた炭酸ガスと根が吸収した水を原料にして、太陽エネルギーを利用することで、ブドウ糖を生産する。この過程を光合成と呼んでいる。そのブドウ糖をもとにして多くの物質を生産している。
 植物は、光合成したブドウ糖から自分の体を作るために必要なタンパク質、脂肪、セルロースなどを合成したり肥料を吸収したり、細胞を作ったりする生産的な仕事をするためにエネルギーが必要である。そのエネルギーはブドウ糖が体内でしだいに簡単な物質に酸化する。いわゆる、呼吸過程で生産され、ブドウ糖は最終的には炭酸ガスと水に変化する。
 葉の色は樹勢を表すが。少し薄めの葉色が良く、濃すぎる濃緑色では樹勢が強すぎ、逆に淡緑色の葉色では衰弱の兆候である。
 樹勢とは樹が生長する勢いであり、開花、結実など生殖生長に属する現象を除いた栄養生長の強さである。枝葉を伸ばし樹冠の拡大をはかる栄養生長と花芽を形成させ、花を咲かせ、果実を成らせる生殖生長とは相反する面を持ち、栄養生長が強すぎると生殖生長が抑えられ、生殖生長が盛んになると栄養生長が衰える。したがって、適度な枝葉の生長をはかりながら充実した花芽を形成させることが栽培技術として最も望まれることである。
 無袋栽培に適した「ふじ」の葉中チッソ含量は2.4~2.8%の範囲である。
葉中チッソ含量が高まるにつれて葉緑素含量が高まるから、ある範囲内では葉中チッソ含量と葉色はきわめて密接な関係がある。葉色を葉中チッソ含量の栄養診断に用いることが出来れば、果実品質の管理や施肥設計など広く現地で応用できる。
 このため作成されたのが葉色カラーチャート(葉色帳)で「ゴールデン」と「ふじ」の2品種用がある。カラーチャートは8段階の色票からなり、色の特性は淡緑色(色票1)から濃緑色(色票8)までの葉色が数値化されている。
 リンゴ「ゴールデン」と「ふじ」の好適な葉色は6月下旬~7月上旬調査でカラーチャート指数が5~6である。「ふじ」の着色に対するその上限は6.0、また下限は果実の肥大を確保することで5.0とする。
 葉色による栄養診断は組織や地域で集団診断を行う場合には、指導機関の協力を得て効率的な葉緑素計を活用することが望ましい。葉緑素計とカラーチャートとの関係は表―4のとおり有意な正の相関関係が見られ、今までの試験成績との読みかえも可能である。
 葉緑素計(ミノルタ製 SPAD-502型)による栄養診断の適正緑色指標は7月下旬~8月上旬の葉色がSPAD値で46~48である。
 良品、均産維持のためには、葉の枚数が必要である。6月下旬調査で頂端新梢は30~35cm、新梢停止率は80%以上になると共に葉数を不足しないように葉の保護は病気、害虫の早期発見による適期防除に努めることが望まれる。

6問題点の改善には知恵を共有し、技術を見せ合い、教え合う。

 研究機関、指導機関などで開催されるいろいろな講習会(勉強会)などに参加することは大変有意義なことである。出来るだけ大勢の方々に参加して欲しいが、実際に参加する人数は生産農家の何%になるか。折角、見たり、聞いたりした技術、知識を本当に生かすためには何が大切か考えて欲しい。
 その答は、自分が個人的に時間を都合して講習会などに参加したことだから見たこと、聞いたことを他人に教える義務はないと考える人もいる。確かに教える義務はないかも知れない。しかし、地域、組織にとって良い産地にするための話題であれば地域の仲間と話し合って、他の人の意見も聞いて地域、組織全体のレベルアップに結びつけたい。
 地域の仲間達や日頃からお世話になっている人達には常に感謝し、人と人とが「お互いに支え、支えられている」ことを忘れずに、技術や知識を自分だけのものにせず、お互いに支える側の役にたつことが出来るようになって、地域の問題点を知識、技術の共有することで早期に解決することが期待できる。
 そのためには、地域、組織内の共有する知識、技術の公開する例会(勉強会、巡視会、園地品評会など)を開催したらどうか。共有する知識、技術の公開効果が樹園地に見えるようになると自然に仕事も楽しくなる。

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農林部農業振興課(水田利活用係・作物振興係)
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